ボーケイSM11 60度Lグラインドでロブショットを打つ方法
60度を入れてもロブが打てなかった、その本当の理由
グリーン奥の花道から残り20ヤード。ピンはエッジ際で、手前に落とす余地が1ヤードしかない。フェースを大きく開いた60度を構えた瞬間、体が固まった。打てない。いや、正確に言うと「打ち方を知らない」だ。
工房で500本以上試打してきた経験から先に結論を置く。60度でロブショットが打てない原因の8割はグラインドの選択ミスだ。スイングを直す前に道具を見直す必要がある。
SM11の60度には、2026年5月時点でLグラインドとMグラインドの2系統が存在する(公式仕様参照)。Mグラインドはバウンスが高く、バンカーや厚いラフに向く設計だ。フェースを開いてロブを打つなら、Lグラインド以外の選択肢はない。この2本の違いを理解しないまま練習を重ねると、ザックリとトップが永遠に交互に出続ける。ロブショットへの苦手意識は、技術より前に道具の問題である。
グラインドを知らず遠回りした半年間
Sグラインドの56度でロブショット練習を半年続けた時期がある。フェースを45度開いて、テンポを落として、手首を固める。思いつく修正は全部やった。再現性は上がらなかった。
工房のフィッティングで転機が来た。クラフトマンがSM10のLグラインドとSグラインドを並べ、「フェースを開いた状態でソールを地面に置いてみてください」と一言言った。
やってみて、5秒で理解した。
- Sグラインドでフェースを開くと、ヒール側が浮いてリーディングエッジが地面から離れる
- Lグラインドでフェースを開いても、ソール全体が地面に対してほぼ均等に接触する
この構造差は、Lグラインドがヒールとトゥを大きく削り込んで極薄にしてある設計による。開いた状態が「設計上の基準」なのだ。スクエアに使えばソールが薄い分だけ刺さりやすい。つまり開いて使う前提の人にしか渡せない道具だということになる。
ボーケイSM11の選び方 3仕上げとロフト構成の正解では、グラインドと仕上げの組み合わせを先に決める手順を解説している。購入前に一度確認しておくと、買い直しを防げる。
60度Lグラインドで変わった3つの発見
発見1: 開いたときのリーディングエッジが「収まる」感覚
ロブショットのアドレスで最初に確認すべきことは一つ。フェースを開いた後、リーディングエッジが芝の表面に対して水平に収まっているかどうかだ。
SM11 60度 Lグラインドをフェース30〜45度開いてアドレスすると、リーディングエッジが芝の表面にきれいに収まる。構えた瞬間から「入る」という確信が持てる。アドレスは握手に似ている。道具への信頼が先にあって、初めてスイングが委縮しなくなる。バウンス角は6度(公式仕様参照)。フェースを30度開いても実効バウンス角がネガティブにならない設計の余白が、ミスを吸収する。
Lグラインドが特に力を発揮する場面:
- 硬いベント芝・高麗芝のカラー周り(フェアウェイ〜グリーン際)
- バンカー越えのロブ(残り20〜35ヤード)
- グリーンエッジから3ヤード以内、ピン手前1ヤードで止めたい場面
重いラフやバンカーのメインショットには向かない。守備範囲を限定することが前提だ。
SM11を選ぶ際、グラインドと合わせて3種類の仕上げ(クロム・ジェットブラック・サテン)も迷いポイントになりやすい。ロブショット重視なら、スピン性能を維持しやすいサテン仕上げが編集部の推しだ。
発見2: ザックリの正体は「跳ね返り型のトップ」だった
60度でザックリが出るとき、ヘッドが刺さったと感じる人が多い。違う。バウンスが高いモデルをフェースオープンで使うと、ソールが地面から跳ね返ってリーディングエッジがボール赤道部を直撃する「跳ね返り型トップ」が発生する。感触はザックリに近いが、メカニズムはまったく別だ。
Lグラインドの極薄ソールはこの跳ね返りが起きにくい。ソールが地面を滑る感覚でスイングできるため、インパクトゾーンが前後に3〜4cm広くなる(編集部試打観察による)。硬いベント芝のカラー周りでは、この差が顕著に出た。
ただし重いラフではソール幅のあるMグラインドやSグラインドの方が安定する。「どこでも使えるグラインド」は存在しない。守備範囲を絞ることでLグラインドは機能する。
発見3: 60度を加えると56度の使い方も整理される
60度Lグラインドをバッグに入れた後の変化は、ロブが打てるようになっただけではない。56度の使い方が整理された。これが実際のスコアに一番効いた変化だ。
| クラブ | 主戦場 | 外すシーン |
|---|---|---|
| 60度 Lグラインド | カラー周りロブ、バンカー越え20〜35yd | 厚いラフ、バンカーメイン |
| 56度 Sグラインド | バンカーメイン、厚いラフ | フェースオープンのロブ |
2本の役割が分かれた瞬間、コースでの迷いが消える。「これで打つか、あれで打つか」という迷いがなくなると、1打の集中度が変わる。迷いのない1打が再現性を上げる。これがスコアへの実質的な効果だ。
同じ失敗を避けるセットアップの手順
順番を守ること。逆にやると手首に余計な力が入り、スイング全体が崩れる。
- フェースを目標に向けたまま、グリップより先にフェースを開く
- 開いたフェース角を保ったままグリップを握り直す
- スタンスを開いた角度の分だけ左に向ける
- 体重は左60〜65%。右足つま先をわずかに外へ向ける
- スイングはスタンス方向(左)に振り抜く。フォローで右手を返さない
練習場で30球確認してからコースに持ち込め。コースで初めて試すと、アドレスへの不安がスイングを壊す。順番が先だ。
よくある質問
Q: Lグラインドのバウンス6度は低すぎないか?
フェースを30〜45度開いて打つロブショットでは、実効バウンス角は数値より高くなる。スクエアに使えばソールが薄い分だけ刺さりやすいので、フルショットや転がしには向かない。用途を「開いて使う場面限定」に絞れば、バウンス6度は正解だ。
Q: 60度でもSグラインドを選ぶ理由はあるか?
ロブ目的なら、ない。Sグラインドはフェースをスクエアのままバンカーや厚いラフで使う設計だ。フェースオープンにすると実効バウンスが過剰になり、ソールの跳ね返りが起きやすくなる。ロブショットが目的ならLグラインド一択だ。
Lグラインド60度が向く人・向かない人
向く人
- ハンデ10〜20で、ショートサイドからのアプローチを武器にしたい人
- 60度を持ちながら使えずにいる中上級者(グラインドを変えれば改善する可能性が高い)
- 硬めのベント芝・高麗芝のコースを主に回る人
- 56度と2本体制でセッティングを組みたい人
向かない人(本音)
バンカーのメインウェッジを兼ねたい人には渡せない。バウンス6度は砂が厚い場面で刺さる。バンカーには56度Sグラインド(バウンス14度前後)を別途持つべきだ。
スコア100超でスイングが固まっていない人も、今は後回しでいい。60度は「使える状態になってから追加する道具」であって、苦手を補う道具ではない。先に56度を安定させること。順番を間違えれば、練習量が多いほど遠回りになる。
重いラフが主戦場なら、ソール幅のあるモデルを選べ。ラフへの食い込みはソール幅で決まる。
次のラウンドまでに1球だけ試す
今すぐできることはひとつだ。
試打コーナーでSM11 60度 Lグラインドを手に取り、フェースを30度開いてアドレスする。グリップより先にフェースを開く。リーディングエッジが地面に収まっているか、目で確認する。
それだけ。1球。1分。
60度ロブショットへの苦手意識は、スイングより先に道具のグラインドで決まることが多い。グラインドが変われば60度の使い方が変わる。次のラウンドでショートサイドに外したとき、引き出しが1つ増えている。それに気づくのが1ラウンド早ければ、削られるスコアの数が変わる。
参照元
- ボーケイデザイン ウェッジの人気歴代モデルと選び方 | ゴルフ豆知識




